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運動するなら朝?夜?--12週間の有酸素運動。朝と夜でこんなに違う効果が出る理由

 

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【朝運動と夜運動の違いとは?--12週間の実験が示す睡眠と健康への影響】

 

現代社会ではストレスや不規則な生活が原因で、睡眠障害や生活習慣病が増加しています。健康維持のために運動は重要とされていますが、「運動は朝にすべきか?夜にすべきか?」という疑問に答えた研究は少ないのが現状です。今回紹介するのは、中国の研究チームが発表した、12週間の有酸素運動による健康効果を朝と夜で比較した注目の研究です。

 

【睡眠の質を高めるなら「朝の運動」がおすすめ】

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この研究では、18〜28歳の座りがちな男性58人を、朝6〜8時に運動するグループ(ME)、夜6〜8時に運動するグループ(EE)、そして運動しないグループ(CON)に分け、12週間にわたり週150分以上の中強度の有酸素運動を行わせました。

 

その結果、両グループともに「寝つきの良さ(睡眠潜時)」が改善し、ベッドに入ってから短時間で眠れるようになりました。しかし、朝運動をしたMEグループでは、さらに「睡眠時間帯の前倒し(早寝早起き)」と「メラトニン分泌の前進」も確認されました。

 

メラトニンとは、眠気を促すホルモンで、体内時計(概日リズム)を整える役割があります。これが早く分泌されることで、自然な眠気が早い時間に訪れるようになるのです。朝の運動は、太陽光と組み合わさって強力な「体内時計の調整スイッチ(zeitgeber)」として働くと考えられています。

 

夜運動のEEグループでは、寝つきは改善されましたが、睡眠時間帯やメラトニンの変化は見られませんでした。つまり、睡眠リズムを整える目的であれば、朝の運動がより効果的といえます。

 

【脂肪を減らしたいなら朝運動がスピーディ】

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次に、体組成(脂肪量など)への影響です。12週間後、朝運動と夜運動の両方のグループで、内臓脂肪・皮下脂肪ともに有意に減少しました。特に朝運動グループでは、運動開始4週間後という早い段階から脂肪量の減少が確認され、内臓脂肪・皮下脂肪ともにバランスよく減っています。

 

さらに注目すべきは、朝運動によって血中の「中性脂肪(トリグリセリド)」と「総コレステロール」が有意に低下したことです。これらの指標は動脈硬化や心疾患のリスクと直結しており、特に内臓脂肪と密接な関係があります。

 

夜運動でも脂肪の減少は見られましたが、血中脂質の改善効果はありませんでした。この違いは、朝の運動が脂質代謝(脂肪の分解や利用)を促進しやすい時間帯であることや、ホルモン(コルチゾールなど)の分泌リズムが関係していると考えられています。

 

【血管機能の改善には夜運動がより効果的】

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最後に、血管の状態(血流や動脈の硬さ)についての結果です。動脈の血流速度や直径、壁の弾力性などを測定したところ、朝運動・夜運動ともに「動脈の柔軟性の向上」と「血流の摩擦力(WSS)の増加」、および「血流の乱れ(OSI)の減少」が見られました。

 

中でも夜運動グループでは、血流量や血管の広がり、中心血流速度が大きく改善しており、「脳への血流供給の効率化」が示唆されました。また、夜運動によって「収縮期血圧の低下」や「末梢血管抵抗の低下」も確認されており、血圧のコントロールにも有効であることがわかります。

 

これらの効果は、自律神経のバランス改善や血管内皮機能の向上(NO産生の増加など)によるものと考えられます。特に高血圧の人にとっては、夜の運動が大きなメリットをもたらす可能性があります。

【どんな運動をすればいい?推奨される有酸素運動】

研究で行われた運動は、以下のような「大きな筋肉を使う有酸素運動」でした:

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  • ランニング
  • 縄跳び
  • エリプティカルトレーナー
  • サイクリング

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これらはいずれも、心拍数を上げて中等度の強度(心拍予備率の60〜70%)を維持できる運動です。参加者は心拍センサー付きのリストバンドで強度を管理していました。

つまり、「軽く息が上がり、会話はできる程度」の強度が目安です。もしランニングが難しければ、早歩きや階段の昇降、自転車通勤でも十分効果があります。大切なのは、週に150分以上を継続することです。

 

【まとめ:目的に応じて運動の時間帯を使い分けよう】

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この研究から得られる結論は以下のとおりです。

 

* 「睡眠リズムを整えたい」「脂肪を効率よく落としたい」→ 朝運動がおすすめ

* 「血圧を下げたい」「血流を改善したい」→ 夜運動がより効果的

 

どちらの時間帯でも、週150分以上の有酸素運動を12週間続けることで、体脂肪の減少や動脈の柔軟性向上など、明らかな健康効果が得られます。日中忙しい方でも、ライフスタイルに合わせた運動のタイミングを選ぶことで、より自分に合った健康づくりが可能になります。

 

特に体内時計が乱れがちな現代において、運動の「タイミング」が健康維持の重要なカギとなることは間違いありません。

 

【参考論文】

Bingyi Shen et al. "Differential benefits of 12-week morning vs. evening aerobic exercise on sleep and cardiometabolic health: a randomized controlled trial" Scientific Reports, 2025; 15:18298. [https://doi.org/10.1038/s41598-025-02659-8](https://doi.org/10.1038/s41598-025-02659-8)

 

 

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